『許されざるもの』(イーストウッドではない)
2005年に釜山国際映画祭で最多の4冠受賞したという本作。クリント・イーストウッドの『許されざる者』と同じタイトルかと思ったら、「もの」と「者」が違うようだ。
内容は、徴兵制度による兵役義務をひきうけて軍隊生活をおくる韓国の若者たちが、軍隊内階級制度のなかでのきつい暴力とゆがんだ権力関係に疲弊していくさまを描いている。
エゴを丸出しにした上官や古参兵たちの理不尽なやり口や、下級兵の恥ずべきへつらいと硬直した振る舞い、ということになれば、すぐに大西巨人の『神聖喜劇』を思い出してしまう。が、やや感じが違うかな。
この映画は、上官によるいじめとか権力にこびるいやらしさとか、そういうことを意識的には描いているが、しかし、映画を見ていてそのようなことで嫌な感じはいまひとつ受けないようになっている。むしろ、韓国の男たちが、軍隊ではおおぴろげに、いや軍隊でなくても、なにか関係としても身体的接触でもベタベタしているような、そんな傾向をとらえているように思える。そしてそれがなんとなく嫌なような、それでいて心地よいような、そんな印象を与えるようになっているのではないか。