2007-01-01から1年間の記事一覧

『十八歳、海へ』

藤田敏八監督の1979年作品『十八歳、海へ』をDVDで先日見た。原作は、中上健次の1つの短編小説だが、中身はかなり違うそう。実は、中上の同名の短編小説集はまだ読んでいない。どちらにせよ、映画は映画として見るにしくはない。森下愛子と永島敏行演じる…

『サマリア』以降が重要だそう

キム・キドクの『サマリア』をDVDで見た。暴力や性のある極端な形態における「愛」みたいなものを描き出そうとする手法は、しばらく前に見た同監督の『悪い男』とパターンが似ている。その初発の思いつきが映画の流れの中で停滞すれば、別の着想へと接木…

『イン・マイ・カントリー』『僕の大事なコレクション』

『イン・マイ・カントリー』をDVDレンタルしてみる。南アフリカで長年黒人民衆を苦しめてきたアパルトヘイトによる被害を調査し、裁きよりは和解をうながす「真実和解委員会」を取材するジャーナリストの男女が主人公。アフリカ系アメリカ人の男性をサミ…

ラスタの時間は停止している?!  『ルーツ・タイム ROOTS TIME』

『ルーツ・タイム ROOTS TIME』というラスタ映画を第七藝術劇場で見た。2006年作ということだったので、今までのラスタファリアンやレゲエミュージシャンを描いた映画とは、また違うものを見せてくれるかと思ったが、なんというかいつも以上にコテコテのラス…

『長江哀歌』

ジャ・ジャンクー監督作品『長江哀歌(ちょうこうエレジー)』を見る。同監督の作品は、はじめて見た。「大河・長江の景勝の地、三峡。そのほとり、二千年の歴史を持ちながら、ダム建設によって、伝統や文化、記憶や時間も水没していく運命にある古都・奉節…

『許されざるもの』(イーストウッドではない)

2005年に釜山国際映画祭で最多の4冠受賞したという本作。クリント・イーストウッドの『許されざる者』と同じタイトルかと思ったら、「もの」と「者」が違うようだ。内容は、徴兵制度による兵役義務をひきうけて軍隊生活をおくる韓国の若者たちが、軍隊内階…

『悪い男』

キム・キドク監督の少し以前の作品『悪い男』をDVDで見る。正直期待していなかったのだが、思ったほど悪くはなかった。しかし、思いつきで作っているところがあって、後半は展開が無理気味で、結局、主人公の男の行動に一貫性を与えきれていない。「純愛…

期待の『サッド ヴァケイション sad vacation』

青山真治監督作品『サッド ヴァケイション』を見る。初日だったので、そこそこ人は多かった(同じ映画館の別のスクリーンで『エヴァンゲリオン』をやっていて、そちらのほうが断然人は多かったが)。で、感想はというと、よかったところもあるし、不満もなか…

フィデル・カストロの元気な姿がそこに

キューバの指導者フィデル・カストロの直接のインタビューに成功したオリバー・ストーンのドキュメンタリー映画『コマンダンテ COMANDANTE』を先日(もう2週間ほど前)見た。去年あたりから病気でほとんど公式の場には出てこなくなっているようだが(快復の…

『女が階段を上がる時』

成瀬巳喜男の1969年の『女が階段を上がる時』をDVDで見る。高峰秀子が銀座のママを演じているのだが、どこかに不幸を背負っているような憂いは、いつものスタイル。しかしそれがじめっとせず、乾いた寂しさを感じさせるのが、この人の良さなのかなと思う…

クリストファー・ノーランの『プレステージ』

クリストファー・ノーラン監督の『プレステージ』を見る。二人の奇術師が互いの技を激しく競い合うのだが、そのマジックの内容が大掛かりになるほどに、映画のテイスト自体が大味になっていくのが、最大の欠点。というか、なんか変な電気仕掛けの「物体複製…

『ウリハッキョ 우리학교』

北海道朝鮮初中高級学校での日常を描いたキン・ミョンジュン監督のドキュメンタリー映画『ウリハッキョ』をみた。日本社会の中で、はっきりとした朝鮮人としての自覚と誇りをいだいて生きることの、大変さや矛盾などがあるとは思うが、生徒たちはおおむね純…

『Ruffn’ Tuff ラフン・タフ』もう出てるよ!

しばらく前劇場公開がまわってきていたのに見逃して、もったいないと思っていた『Ruffn' Tuff ラフン・タフ〜永遠のリディムの創造者たち〜』のDVDがもう出ています。やっぱり必見だった!60年代から激しく移り変わったジャマイカ・ミュージックシーンの…

ストローブ=ユイレを見た!

正直寝かけた。もうちょっと予備知識を仕込んでから見にいったほうがよかったかもしれない。ジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレ。妥協のない映画づくり、ヨーロッパの精神風土に向き合う厳格な作風、そういう伝説的な映画を見る機会は、関西では…

『パラダイス・ナウ』で知る”Suicide attack”の現実

イスラエルが長年不法に占領し続けているパレスチナ。そのヨルダン川西岸のナブルスという町の若者二人、サイードとハーレドは、先行きの見えない厳しい現実に日々閉塞感を感じている。そんなとき、活動組織から「自爆攻撃 Suicide attack」の任務を引き受け…

『パッチギ!LOVE & PEACE』と石原批判

公開初日に『パッチギ!LOVE & PEACE』を見た。いろいろいえるが、ひとつしぼっていいたい。同時期に公開中の石原慎太郎脚本映画『俺は、君のためにこそ死にに行く』などのように、歴史を捏造し、権力が人を殺すシステムを美化・宣伝する好戦映画が昨今増え…

エチオピアのユダヤ人 『約束の旅路』を見て

先日『約束の旅路』を第七芸術劇場でみた。少し前にラスタ関連の情報を探していて、『アウェイク・ザイオン』というドキュメンタリーをみたのだが(この映画自体は、ユダヤ系アメリカ人の若ものが、レゲエの歌詞に『聖書(トーラー)』の中の聖人が歌われた…

ドイツ人のことよりも

『白バラの祈り』をDVDで見る。前日『麦の穂をゆらす風』を見たときと、驚くほど似たような疑問を抱いてしまった。作品はナチス政権末期にドイツで「白バラ」と名乗る反体制運動の学生たち、とくに女性のゾフィー・ショルが、ヒトラー批判のビラをまいた…

ケン・ローチのことよりも

ケン・ローチ監督作『麦の穂をゆらす風』をDVDで見る。1920年代アイルランドでの大英帝国にたいする武装闘争・独立運動を描いているので、どうやらイギリスでは「反英国的」という批判もあったようだ。しかし英国軍や武装警察の描き方が、アイルランド人…

『東京流れ者』『ツィゴイネルワイゼン』

シネ・ヌーヴォーで特集している「鈴木清順レトロスペクティヴ」に行ってくる。見たのは1966年作の『東京流れ者』と80年の『ツィゴイネルワイゼン』。どちらもそれなりに面白かった。『東京流れ者』は、まだ20代の渡哲也演じる主人公のヤクザが、ドンパチし…

『ブラック・ブック Black Book』

ポール・ヴァーホーヴェン監督の『ブラック・ブック』を見る。ナチに家族を殺されてレジスタンス運動に身を投じ、ついにはナチ将校にスパイとして近づくユダヤ人女性が主人公であり、題材としてはシリアスな内容を含むわけだが、アクションやサスペンス、メ…

リントン・クウェシ・ジョンソンの

ダブのリズムにのせて、人種差別告発・反権力思想の詩を朗読(朗誦?)する在英ジャマイカ人リントン・クウェシ・ジョンソン。独特なスタイルによって、70年代半ばからUKレゲエのシーンにその存在感あらわしたこの詩人の、朗読会・音楽制作・人権運動・政…

『ガイサンシーとその姉妹たち』と『チョンおばさんのクニ』

シネ・ヌーヴォXで上映中の班忠義監督の『ガイサンシー(蓋山西)とその姉妹たち』と『チョンおばさんのクニ(王母鄭氏)』をみる。どちらも帝国日本軍による性暴力をうけた中国人女性・朝鮮人女性を取材したドキュメンタリー映画である。『ガイサンシー』…

『イズラエル・ヴァイブレーション ISRAEL VIBRATION』

去年12月に「PLANET+1」で見た作品だが必要にかられて、『ISRAEL VIBRATION』をとうとうDVD購入した。「イズラエル・ヴァイブレーション」はルーツ・レゲエのコーラスグループとして、まずまず有名どころ。その純正なサウンドはもちろんめちゃめちゃ最高…

『ナチョ・リブレ NACHO LIBRE』

「なちょ〜〜〜」DVDで見ました。ジャック・ブラックがいつも以上のふざけっぷりで、かなりゆるゆるな作りでした。十分楽しめるのですが、もうすこしためというか、メリハリというか、なかせる部分とかあればもっといいのに、と思いました。シスター役の…

フィリップ・シーモア・ホフマンを

映画館で見逃した『カポーティ』をDVDで見る。カポーティの小説を『冷血』はおろかなにひとつ読んでいないので、代表作とその創作にまつわる作家の伝記的な側面を描いたこの映画について、あまりえらそうなことは言えないのだが、それでも直感的に「エン…

マイケル・チミノ『天国の門』

青山真治や阿部和重が以前からよく言及していて気になっていたマイケル・チミノ監督作『天国の門』をDVDで見る。率直にいって、なんと形容すればいいのかよくわからない。“超大作でありながら異様なマイナー性をただよわせ、大傑作であったかもしれない可…

『グアンタナモ、僕達が見た真実』

マイケル・ウィンターボトム監督作品『グアンタナモ、僕達が見た真実』を見に行ってきた。グアンタナモ米軍基地は、キューバ東南部グアンタナモ湾にあるアメリカ合衆国海軍の基地。米西戦争後1903年に独立したキューバから合衆国が租借してきたが、キューバ…

聖書より退屈

ジョージ・スコット監督『天地創造』(1966)を見る。少し前に買った『ハリウッド100年のアラブ』(朝日選書)に、旧約聖書のなかでイスラム・アラブの始祖が描かれていると解釈されている部分が、映画においてもいかに典型的なオリエンタリズムとして表象され…

『キンキーブーツ Kinky Boots』

すごいよかったですね。全体的には予定調和なところもありますが、いい気分になるにはぴったりの映画です。キンキーブーツ [DVD]出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント発売日: 2007/02/23メディア: DVD クリック: 10回この商品を含む…