ジャマイカ・ピース・コンサート

1978年ボブ・マーリーほかさまざまなジャマイカのミュージシャンが集って開かれたピース・コンサートのライブDVDを見る。当時ジャマイカで対立が激化し、武力闘争にまで発展していた人民国家党と労働党の両党首を、ボブ・マーリーがステージ上で手を握らせ和解を促したことで有名。もちろんそのシーンもよかったが、1年数ヶ月前に同種のコンサートを開催しようとして凶弾を受けたにもかかわらず、大観衆を前にステージに堂々とたち、とりつかれたように歌い踊り続けるボブ・マーリーの姿が感動的。その熱狂にはどこか宗教的陶酔の気配も見える。

しっかりした伝記を読んでいないので分からないところがあるが、ボブ・マーリーを銃弾で襲ったのは、おそらく労働党の息のかかった暴力組織だったはず。それに労働党が政権をになっていた昔からラスタとして嫌がらせや抑圧をこうむっていたのに、このとき労働党にも等分の態度で和解の呼びかけをしたことになる。応援していた人民国家党が政権与党になっても、結局は底辺の弱者を解放しえないままなのだから、一方にだけ期待を抱けなくなっていたのかもしれないが。

もうひとつ象徴的に思えたのは、ジャマイカが90%以上黒人系で占められる国であるのに、ボブ・マーリーが間に立って手をつながせた国家のリーダーたる人民国家党のマイケル・マンリーも労働党エドワード・シアガも、ともに白人であったことだ。これはすでに30年ほど前のことだが、さて現在のジャマイカはどうなっているのだろうか?