聖書より退屈
ジョージ・スコット監督『天地創造』(1966)を見る。少し前に買った『ハリウッド100年のアラブ』(朝日選書)に、旧約聖書のなかでイスラム・アラブの始祖が描かれていると解釈されている部分が、映画においてもいかに典型的なオリエンタリズムとして表象されているか、解説されていたので、興味を持ったのだった。実際に確認すると、その部分は確かにそうなのだが、しかし著者が指摘してる点だけでなく、あらゆる場面でオリエンタリズム的な表象を多用していて、しかもその意図が稚拙な混乱を呈していて、ありていにいえばデタラメきわまりないという感じだった。
このオリエンタリズム多用のデタラメさに加え、映画自体が壮大さを演出しようとしたのか、物語の展開についても描写についてもあまりに冗長で、3時間のうち1時間ほどもうとうとしてしまった。聖書の記述のほうがはるかに簡潔で魅力的なのは、まあ、仕方ないとして、しかしもうちょっとどうにかできただろうにと思ってしまう。ただ聖書の内容をなぞるだけで、作り手は自分たちが「何」を描いているのか、実はよく分かっていなかったのではないか。人物たちの行為の意味を少しも理解できていないのではないか、そんな気さえする。西洋人たちの聖書イメージが、一般にこれほどイージーなものだとは、ちょっと信じがたいが。
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ハリウッド100年のアラブ―魔法のランプからテロリストまで (朝日選書)
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