『パラダイス・ナウ』で知る”Suicide attack”の現実

イスラエルが長年不法に占領し続けているパレスチナ。そのヨルダン川西岸のナブルスという町の若者二人、サイードとハーレドは、先行きの見えない厳しい現実に日々閉塞感を感じている。そんなとき、活動組織から「自爆攻撃 Suicide attack」の任務を引き受けるように要請を受ける。剥がせないように爆弾を身にまとい、有刺鉄線を破ってイスラエル側に進入し、テルアビブに向かう二人……。

映画は、ここから二人のパレスチナの若者がたどることになる出来事を、「原理主義的宗教」や「反体制テロリスト」といった偏った見方をぬきに、日常の現実と地続きのリアリズムからえがく。そこにはごくふつうの若者の行動と心理がみられる。民族や共同体のための崇高な使命として、その意義を引き受けながらも、彼らはどこか、たんたんとしすぎている。イスラエルにたいする攻撃性や怒りよりも、おそらくは日々甘受させられている「恥辱感」のようなものが、うら若い命を投げ出すことをためらわさせないのかもしれない、という印象を持った。

映画としていいかどうか、アカデミー賞ノミネートに反対するイスラエル人の運動があったとか、いろいろいえるかもしれない。しかし、パレスティナの人たちはどのような人生をおくっているのか、どんな生活でなにを考えているのか、ということを知ること、ただ情報や知識として見ることにも、十分な価値があると思った。

http://www.uplink.co.jp/paradisenow/パラダイス・ナウ公式サイト)