『女が階段を上がる時』

成瀬巳喜男の1969年の『女が階段を上がる時』をDVDで見る。

高峰秀子が銀座のママを演じているのだが、どこかに不幸を背負っているような憂いは、いつものスタイル。しかしそれがじめっとせず、乾いた寂しさを感じさせるのが、この人の良さなのかなと思う。

そのほか、同成瀬作『浮雲』を思い出させる森雅之が店に通う銀行員を演じ、仲代達矢が20代のわかいマネージャを演じていたり、岡田茉莉子ばりの団玲子が若いホステスを演じて、それぞれ特徴があり面白い。

あと強烈な印象を残すのがやはり中村鴈治郎か。小津の『浮草』で京マチ子と「アホ、アホ、おまえは、アホや」と言い合うシーンほどではないが、関西のうっとおしいクソじじいをやらせると、あまりのリアルさにほとんど演技とは思えなくなる。うーん、演技じゃないのかな。

女が階段を上る時 [DVD]

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