『イン・マイ・カントリー』『僕の大事なコレクション』

『イン・マイ・カントリー』をDVDレンタルしてみる。

南アフリカで長年黒人民衆を苦しめてきたアパルトヘイトによる被害を調査し、裁きよりは和解をうながす「真実和解委員会」を取材するジャーナリストの男女が主人公。アフリカ系アメリカ人の男性をサミュエル・L・ジャクソン南アフリカの白人女性をジュリエット・ビノシュが演じている。

夫や息子を殺された黒人の女性が、その生々しい出来事を苦痛をこらえて大勢の人の前で証言する。その暴力を振るった当の白人の警官たちが、横で蒼白になりながら黙ってそれを聞き、そのあと自分の犯罪行為を告白してゆく。罪を認め謝罪し、またその罪が政治権力に強制されたことを証明することで(多くは事実をただ明らかにすることで)、許しは与えられる。暴力で深く傷を負わされた人種間の対立を「和解」に導く、こうした「真実和解委員会」によるプロセスが、随所に描き出されている。

「委員会」について映画で描いていることが、いくらかはフィクション化されていたりするかもしれないが、おおよそは実際のことなのだろう。「和解」とされるものが、どれほど人間性が試されるもので、またどれほどの超人的な困難を要求されるものなのか、映画を見て強く感じさせられる。

従軍慰安婦はなかった」「集団自決の強制はなかった」「虐殺の事実はなかった」「原爆は仕方なかった」と、自らの罪を認めず、その行為や事実を明らかにしようとしない、現在の日本の社会の潮流を考えてみると、なかなか前途があやしい限りではあるが、戦争犯罪や現在も残され続ける「植民地遺制」と向き合うには、このように人間性が問われなければならないのだろう。

イン・マイ・カントリー [DVD]

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『僕の大事なコレクション』もDVDレンタルして見る。

イライジャ・ウッドが演じるユダヤアメリカ人青年が、一枚の写真を手がかりに祖父の故郷であるウクライナを訪れ、祖父が合衆国に移り住む手助けをしてくれた(らしい)女性を探して、ゆかりの土地を訪ねる物語。ヒップホップやブラックミュージック好きのちょっとイカレたウクライナ青年と、その祖父がガイド役をつとめ、のどかなウクライナの田舎道を年代物の車で進んでゆく……。

結局、主人公の祖父がアメリカに渡ったのには、いくらかの隠され、語られなかった出来事があったことがわかる。それは、祖父の村で起こったナチスによる虐殺だった。そして、その過去にしばられ独特の「現在」を生き続ける人たちと、主人公は、はからずも出会うことになるのだが……。

この映画でもまた、「語られなかった」ことが語られる。だが、旅の道程を足早に終わらせてアメリカに戻る主人公が、どのように、それらを受け入れていったのかは、いまひとつ明瞭には描かれなかった。そこがこの映画を分かりにくくさせているのではないか。物語は、主人公の収集癖が1つの軸になっていて、原題(『Everything is illuminated』)にあるように「物」に光を当てることでこそ語らせるような描き方ともいえるが……。

『イン・マイ・カントリー』において、とにかくも問題を普遍的にとらえようとする方向が、『僕の大事なコレクション』では、私的にそして「ユダヤ人」問題として方向付けられていることが気になった。

僕の大事なコレクション 特別版 [DVD]

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