『ジャマイカ 楽園の真実 LIFE&DEBT』

しばらく前に家の近くの小さい映画館でやっていたのに見逃していたのだが、ようやくレンタルで見つけて『ジャマイカ 楽園の真実 LIFE&DEBT』を見る。ちょっと前に1978年のボブ・マーリーらのピース・コンサートを見て「現在のジャマイカはどうなってんのん?」と疑問を持ったのだが、その回答の一つがここにあるようだ。

国家の経済危機のため1970年代からジャマイカIMFの援助を受けていたが、そこにはからくりがあった。金を借りるにはさまざまな条件があって、借りた国は「構造調整政策」が要求されるのだという。具体的には、外貨に対する自国通貨の切り下げが行われ、自国産業保護育成のための規制や政策が取りはずされ、また教育や福祉の予算が削減されたりもする。そのため80年代90年代を通じてジャマイカの自立的な経済と産業は崩壊し、それに代わって主にアメリカ資本の安い商品が大量に輸入され、市場を席巻するようになった。価格競争でかなわないため農業は成り立たない。失業者があふれ、その受け皿として特別な条件で誘致された外国企業の、治外法権的な大工場で人々は愕然とするほど低賃金で働かされることになる。労働条件の改善を求めてデモや暴動が起こる。治安権力と衝突して死者が出る。そうすると企業は搾取しやすい他の国へ工場を移してしまい、ジャマイカ社会には荒廃だけが残される。一方、ジャマイカに来ても規定のルートしか回らない欧米のツーリストたちは、そんな過酷な現実を知ることもなく、南国のリゾートで休暇を満喫しているのだった。。。

こういう現実こそを、ジャマイカのミュージシャンたちは嘆き、抗議している(映画でも多くのレゲエ・アーティストが参加している)。そもそもラスタは昔からこのようなことを「バビロン」として呪ってきたのだ。それが、現在も全く変わっていない、むしろ強化されてきているということが、この映画の問題とするところだろう。その「バビロン・システム」は、現在一般には「グローバリズム」と呼ばれている。だから、もちろんこれはジャマイカだけのことではなく、日本の社会や経済、政治とも密接に絡んでいる。国際的な通貨・金融の安定という名目の裏で、先進国と大企業だけが野蛮なやり口で利益を独占するように後押しするIMFへの支出金額の第1位がアメリカであるわけだが、それに続いて、第2位は、そう、予想通り日本なのでした。

ジャマイカ楽園の真実 LIFE&DEBT [DVD]

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