『極北のナヌーク』

近くの映画館でドキュメンタリー映画の原点といわれるらしい『極北のナヌーク』を見る。

カナダの北東部、夏は流氷をかきわけカヌーを操り、冬は氷原にそりを走らせる、という極寒の風土の中で暮らすイヌイット族の一家族の、厳しくもつつましく誇り高い狩猟生活を描いた作品。多少演出もあるようだが、アザラシや魚を氷原のうえから捕らえたり、雪の塊を大きなナイフ一本で切り出し、器用に家を作るさまは、ほとんど驚嘆もの。「エスキモー」とも呼ばれる彼ら先住民にたいして、映画はどうしても「文明側」からの「自然的・原始的」生活に対する憧れのような視線による美化やエキゾティズムと無縁ではないが、それでも「ナヌーク」たちの表情やしぐさには圧倒的なほどの人間味があふれていて、感動を誘う。1922年の作品とは思えないほど画像は明るくきれいだった。おそらく昔のフィルムを何らかの形で修復しているのだろう。