ちくごよみ『戸籍って何だ』4

「家」制度
明治の官僚・役人は、おもに旧士族がになうことになるが、この階層が「戸籍」を導入・管理したことによって、一般民衆にまで、日本の封建制において構築された儒教的な制度が強固に適用されることになる。じつは、「戸主は長男が継承し、妻は夫の家に入る」というのは、日本の民衆の伝統でも習慣でもなかった。それが、戸籍の創設により、民衆にも「氏」が与えられ(これが「苗字を名乗るようになった」といわれていることの実質であり)、この「氏」は代々続く(と妄想される)家族集団として、国家による統治の対象とされるようになる。そのためには、多様な家族の中身には踏み込まず、その代表者=家長に「戸主権」を与えて家を治めさせ、政府行政としては戸主のみを相手にする。つまり、戸主を国家の末端管理者に仕立て上げ、家族を管理させた。


こせきによるじんみんのかんりが、ほうけんせいからうけつがれた「いえ」のかんねんを、じんみんいっぱんにもひろげていったようすが、これによってわかる。そして、このことがどのように、てんのうせいイデオロギーとけつごうしたのかが、じゅうようである。


天皇家の祖先である歴代天皇を神とし、現世における神格の代表として今上天皇をおく」=「祖先神の代行人として、現世を管理するのが戸主である」というように、そせんすうはいを、ばいかいにしていることが、まず、してきできる。


しかしここには、むじゅんしたかんねんの、けつごうがかくされている。それが、「けっとう(血統)」と「いえのれんぞくせい」である。


「そせんかられんめんにつづく」というかんねんは、それがけっとうてきなじゅんすいせいを、たもっていることを、つよくこじする。しかし、えどじだいのぶけは、ようしえんぐみをくりかえし、「いえ」をいじしてきたのであり、またいっぱんみんしゅうにとっても、けっとうがじぶんたちのそんざいをほしょうし、けんいづけるしゃかいてきないみなど、ありえなかった。そして、どうように、じじつじょう、てんのうけも、けっとうてきなじゅんすいせいなど、もちあわせていない。


だから、この「けっとう」というイデオロギーは、きほんてきには、「いえ」のれんぞくせいとしてだけ、たんぽされ、ほかんされていることになる。「けっとう」のじゅうんすいせい=「万世一系」はうそだが、おおざっぱにみれば「いえ」や「うじ」としてれんめんとしているので、どうどうと「ち」のじゅんすいをいいつのれる!(こういう、うそをつくことをまったくおそれずに、たからかにくちにできる、せいしんこそが、にほんせいしんのとくしょくであろう)。